『施工例あり』アップライトピアノ防音対策について | 防音のポイントを徹底解説

アップライトピアノはどのように生まれたの?

1709 年頃のヨーロッパにて、今のグランドピアノの原型であるフォルテピアノが造られた約100年後の1800 年頃、アップライトピアノはアメリカで開発されました。

この頃は荷物を馬が運ぶ時代であったこともあり、 グランドピアノでは運びにくく置きにくいという時代背景から アップライトピアノは誕生。
以降、ヨーロッパの一般家庭においても、 ピアノが広まるようになったとのことです。

アップライトピアノの特徴

アップライトピアノはグランドピアノと同様に、指先で鍵盤を押す力によりハンマーが動き、それにより叩かれた弦の振動を響板に共鳴させることで音が出る仕組みの、アコースティックピアノです。

グランドピアノと構造は異なりますが、ハンマー・弦・響板などの役割はそのままに、演奏者の表現力を生かした演奏を生の音で楽しむことができます。

ハンマーや弦などの内部部品の種類や質・硬軟によっても音色やタッチは変化するため、メーカーやサイズ、造られた国による個体差を楽しめるのも魅力の一つ

またアップライトピアノは、弦が縦に張られているため、縦型で奥行きの短いピアノです。壁に背をつけて置くことができ、限られたスペースでも圧迫感のない設置が可能なことから、一般家庭でのピアノ演奏に選ぶ方が多くいらっしゃいます。

アップライトピアノの音の大きさはどれくらいで、防音対策レベルどれくらい必要でしょうか

縦型でコンパクトなアップライトピアノですが、出る音量はグランドピアノとさほど変わりありません。

種類や音の高低、もちろん弾き方にもよりますが、一般的な大人で約90~100dB

子どもでも約 70dB~、プロのピアニストの方で『110dB』 ほどの音が出ると言われています。
(90dB とは、大声による独唱や、 地下鉄内で感じる騒々しさと同じくらいです。)

アップライトピアノに必要な防音室の条件とは

アップライトピアノ防音室を施工する上で注意したいポイントのひとつは、「お部屋の広さ」。

例えば元が6畳のお部屋を、ボックスインボックス構法でアップライトピアノ防音室として施工した場合、仕上がりは約4畳になります
そのお部屋に幅153cm.高さ131cm.奥行き65cmのアップライトピアノを設置すると、下のようなイメージになります。

防音室として一室丸ごとリフォームをする場合、現状より一回り小さい仕上がりとなります
アップライトピアノ防音室であれば、メーカーやサイズ・どこの国で造られたかによっても変わりますが、仕上りの広さは最低 2~3 畳程ないと利便性に欠けるお部屋となってしまいます。

次に「遮音性能」。
音が伝わることを「音の伝搬」と言い、壁があれば音は小さくなり、これを「遮音」と言います。

この音の小さくなる値は「D 値」で示されます。
例えばピアノを100dB で演奏し、隣の部屋で 50dB の大きさで聞こえるケースでは、遮音性能は 100dBから50dBを引いた数値、すなわち“D-50”と示します。

アップライトピアノ室なら目的や使用環境を考慮し、D-50~D-55程度を目標値として防音室の設計を行います。

隣室や隣戸の条件によって必要な遮音性能は変わりますが、特にマンションなどの集合住宅においては、 近年わずかな音でも苦情になることが多々あります。

 

自宅でもアップライトピアノが生音で弾ける喜び!マンションでも戸建てでもOK

音の問題が重視されるようになった近年。実は住宅トラブルで一番多いのは、「騒音」と言われています。 自宅でピアノ演奏をしていたところ、近隣からクレームがきてしまったなんて話、よく聞きますよね。

マンションなどの集合住宅でも、戸建て住宅でも、防音対策をする上での重要なポイントを知り、近隣への音漏れや外部からの騒音のない空間で、ピアノ演奏を楽しみましょう。

アップライトピアノ防音対策の基本とは

音の伝わり方や防ぎ方は、マンションなどの集合住宅なのか、戸建てなのか、また建物構造(RC 造・鉄骨造・木造)によっても変わってきますが、アップライトピアノの防音対策は基本的に「空気伝搬音」と「固体伝搬音」の両方が必要です。

空気伝搬音・・・ ピアノから出た音。鳴らした音が空気を通して伝わります。
固体伝搬音・・・ 振動が建材を通して伝わる音。

ピアノは楽器本体が床に触れているため、固体伝搬音も発生します。マンションなどの集合住宅での騒音クレームに繋がる「ペダルを踏む音」や「鍵盤を叩く音」は固体伝搬音になります。

また、注意しなくてはならないのが換気口などの開口部
現状新築の建物には24時間換気が法律で義務付けられており、外と室内の空気の入れ替えをしています。
そのためここから外部の騒音が入ったり、室外への音漏れが生じてしまうのです 換気口や換気扇などの開口部への対策も忘れてはなりません。

アップライトピアノは背中側から、つまり演奏者の奥側から
音が出ます。
背面は壁のことが多いため、きちんとした対策
が必要です。

音は壁や床を伝わり、また壁や天井、床に入射した音が物体
内に伝わることで、外部へと放射されてしまいます。
そのたま、アップライトピアノの防音対策は、壁だけではなく、天井や床も重要となるのです。

『マンションでアップライトピアノを!』自分の好きな時間に演奏しよう

戸建てでのアップライトピアノ防音室施工例はこちら↓

戸建ての場合、外部への音漏れへの対策として特に気を付けたいのは、「窓」。
近隣の環境や建物構造にもよりますが、屋内で出た音が外部へ漏れてしまうだけではなく、外の騒音が家の中にも入ってきます。

窓を二重にする事で対策をとることも可能ですが、ガラスには「コインシデンス効果」という性質があり、これにより特定の周波数の音が抜ける(板厚によって抜ける周波数が異なる)といった現象が生じ、目的や用途の周波数に適したガラスを選択しなくては、遮音という面では効果が得られない可能性もあります。

集合住宅の様に建物自体を外部と共有しているわけではありませんが、隣戸との距離が近い場合など、床や壁から振動が伝わってしまうこともあるため注意が必要です。

アップライトピアノのいろいろな防音対策とは

アップライトピアノの防音対策として、防音室を造る以外にマフラーペダル(弱音ペダル)の使用・消音ユニットの取付け・吸音パネルの使用・組み立て式防音室の設置・窓やドアを二重にするなど様々あります。
上記はピアノ本体への対策や空間での対策になり、手軽に行えるものもあるため、採り入れてみてもいいでしょう

例えばアップライトピアノの特徴でもあるマフラーペダル(弱音ペダル)。 アップライトピアノは 2~3 本のペダルを持ちますが、真ん中(2 本の場合は左側)にあるペダルがマフラーペダルです。

名前の通り、踏むと音を1/3 程度に絞ることができ、ロックをかけ小さい音のまま演奏することができるものがほとんどです。夜間や音が気になる時に効果的ですね。 ここで注意したいのが、使用時のタッチ感と音色

マフラーペダル使用時は、ハンマーはフェルト越しに弦を叩くようになるため、モコモコとした音色になります。加えて鍵盤のタッチも重くなり、演奏者の手首や指に負担がかかることも・・・

また、内部部品の劣化などに繋がってしまうため、長時間の使用やロックをかけたままにしておくことはお勧めできません。

戸建てでのアップライトピアノ防音室施工例はこちら↓


次に消音ユニット付きピアノを見てみましょう。普通のピアノとしても使え、ワンタッチで
消音ピアノに切り替えることができるため、夜間等での演奏時に便利ですね。

しかし消音演奏中に聞こえる音は、ピアノ本来の音ではなく電子音。そして上下階や左右のお部
屋に伝わるコトコトという打鍵音は、一般的な電子ピアノよりも大きくなります。

また組み立て式の防音室を設置した場合はどうでしょう。
賃貸の住宅にも手軽に設置できるという利点はあるものの、防音室内の広さ等の問題から、遮音性能がしっかりととれた、快適な音空間とは言い難いです。

既存の窓やドアを二重にするといった対策をとった場合では、音漏れへの効果はありますが、固体伝搬音は防げません 近隣への音漏れを気にせずに、アップライトピアノ本来の豊かな音を楽しむことができるストレ スフリーな空間は、用途や目的に合った防音室を造ることで叶います。

アップライトピアノ防音室の造り方とは

では防音性能の高いアップライトピアノ防音室とは、一体どのようなものでしょうか?

まず防音室では、壁・天井・床に対して遮音・防振構造(浮遮音
層)が基本的に必要となります。

浮いている空間(浮遮音層)を造ることにより、ピアノから出る
空気伝搬音はもちろん、打弦音・ペダルを踏む音などの固体伝搬音も減衰させる防振構造となります。

「お部屋(箱)の中にもう一つお部屋(箱)」を浮き構造で造り、
これを「ボックスインボックス構法」といいます。

防音室内側の遮音部分と既存の遮音部分により、総合的な遮音性能がとれるようにすることで、防音性能の高い防音室となります

次に換気扇などの開口部。 防音室はその構造上、隙間のない気密性がとても高いお部屋のため、 通常の部屋よりも空気の入れ替えがしづらいものです

建築基準法で、室内の24時間換気が義務付けられていることはもちろんですが、気密性の高い防音室内の湿気や空気の入れ替え・健康面という観点からも換気口を無くすことはできません。
防音室での換気口は、防音効果の高いものを使用し、そこからの音漏れを防ぐ必要があります。

アップライトピアノ防音室で快適な音環境を!

せっかく防音性能の高い防音室を造ったのなら、ストレスのない好みの音空間でピアノ演奏を楽
しみたいですね。
そこで注意したいポイントのひとつは、音響。 お部屋の遮音性能だけを高めると、どうしても部屋中に音が響いてしまい、長時間滞在できる快 適な空間とは言えません。

また、音響対策がされているお部屋とそうでないお部屋では、同じ音でも全く違う音に聞こえてしまうため、遮音・防振だけでなく、室内の音の響きにも配慮した「用途に合わせた音響設計」も重要となります。

音の響きの調整をする上で必要なのが、遮音と吸音の両方を組み合わせること。 防音室の使用用途や、アップライトピアノの特性に考慮した防音室を造りましょう。

手軽に音の響きを調整するには・・・

遮音・防振性能がとれているお部屋で音の響きが気になる時、手軽に調整可能なのが「音響調整パネル」。高音域だけでなく、板振動により、中低音域まで吸音するものもあるため、用途や好みに合わせた音響調整が叶いますよ。

音響調整パネルのご参考はこちら↓

まとめ

アップライトピアノを自宅で演奏する際の防音対策についてわかりましたね。

「防音」をする上で大切なのは、「遮音」・「防振」そして「吸音」
防音工事は、内装工事のような装飾的な部分ではなく、目に見えないところに費用がかかりますので、信頼できる防音会社を選ぶことが第一。

D.S.P は防音工事に特化した会社です。お気軽にご相談・お問合せください。

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