自宅でグランドピアノやアップライトピアノを、周囲への音漏れを気にせずに好きな時間に弾けたら最高ですよね!
わたしたちも、「自宅でピアノ練習をしたい」というご相談をいただくことが多々あります。
ピアノは、お子様から大人の方まで幅広く求められる楽器である一方、「音量」や「時間帯」を気にして、思うように練習できない楽器のひとつでもあります。
特に集合住宅では、ピアノの出音と併せて打鍵音やペダル音が階下や隣室に伝わりやすい楽器でもあります。
自宅練習ができれば、スタジオへ行く手間もなく、弾きたいと思ったその時にすぐ鍵盤に向かえます。
自宅で本格的なピアノ演奏をすることはできるのでしょうか?・・・答えは「できる!」。
ピアノの特性に応じた防音室をご自宅に造ることで、実現は可能です!
ピアノ防音室を自宅に施工させていただいたお客様より、以下のようなお声を頂いています。
今回は、自宅にピアノ防音室を施工するための重要なポイントなどをみていきましょう。
まずピアノ防音室を自宅で実現する基本について

一口に自宅と言っても、戸建と集合住宅に分かれ構造も木造、鉄骨、RC、SRCと様々です。
まずは、ピアノ防音室をどこに造りたいかを考え、希望の部屋にピアノ防音室を造ることが可能なのか判断しなくてはなりません。
ピアノ防音室が造れる住宅とはどんな住宅でしょうか
基本的に、ピアノ防音室に限らずスペックの高い防音室は、耐荷重の問題から木造や鉄骨造の戸建て住宅2階以上に施工することができません。
※ただし、建物計画時に耐荷重を考慮した構造設計の戸建の場合は別です。
マンションなどの集合住宅の場合は、施工後の天井高に違いは出ますがほとんどの住宅で施工可能です。
ピアノができるお部屋の広さを考える
大事なのはお部屋の広さ。
防音室として一室をリフォームをする場合、現状より小さい仕上がりとなります。
例えば、一般的な6畳のお部屋をボックスインボックス構法でピアノ防音室に施工した場合は仕上がり内寸で約4畳弱になります。
仕上がりの広さを考慮した上で、ピアノ防音室を目的に合ったお部屋にしなくてはなりません。
又、お部屋の形状が正方形なのか、長方形なのか、集合住宅(マンション)の際は梁型形状や柱型形状の歪な形をしたお部屋の場合、本来ピアノを置けるはずの広さであったとしても、設置が困難なケースもある為、事前に図面や現地の確認、調査が必要となります。
アップライトピアノの場合: 仕上りで最低2.5畳〜3畳程度あれば設置・演奏は可能ですが、音響面を考慮すると少し余裕が欲しいところです。
グランドピアノ(C3クラスまで)の場合:仕上りで最低3.5畳〜4.5畳程度は必要です。
蓋を開けて演奏する場合、音の跳ね返りを考慮すると、6畳以上の空間があると理想的な響きが得られます。
また、ピアノ教室やアンサンブル練習(ヴァイオリンとの合わせなど)で使用したい場合は、人や譜面台が入るスペースも考慮してプランニングすることが重要です。
ピアノの搬入はできる?
防音室施工後の搬入経路も重要です。
防音室は完成したけどピアノが搬入出来ない、なんて事になったら大変な為、予め弊社設計部とピアノ搬入業者様への確認が必要となります。
玄関から防音室までのルートで搬入が困難の場合は掃き出し窓から搬入をしたり、マンションの場合はクレーン等で搬入するケースもあります。
完成した防音室の音場(音響)環境については?
防音室は遮音性能が優れているほど気密性が高くなり、お部屋の中で音が反響し響きやすくなります。
最初の段階から吸音工事をお入れする事も可能ですが、人それぞれ聴覚は異なりますので、多少響くお部屋がお好きな方もいれば、デッドな響かない部屋がお好きな方もいらっしゃいます。
特にご要望がない場合は設計の段階で最低限の吸音施工は行います。
工事が完了した後に実際にピアノ演奏をして音響調整をする場合は吸音建材を使用した工事も勿論可能ですが、音響調整パネルといった反射と吸音性能どちらも兼ね備えたパネルを壁に設置(ピクチャーレール等で吊るす)する事により、お好みの音場調整が可能になります。
ピアノの特徴を捉えてピアノ防音室を検討してみる

ピアノの種類やメーカーを明確にする(グランドピアノ・アップライトピアノ)
ピアノ防音室の設計は、ピアノの種類やメーカーによって大きく変わります。
例えば、アップライトピアノは背面から上方向を中心に音が広がりますがグランドピアノは、上下から全体的に音が広がり低音の響きなどを含めサイズ(弦の長さ)でも変わりメーカーによっても音特性に違いがあります。
また、ピアノ以外の楽器などご使用されるケースも多くありますので考慮した設計が必要です。
一般的なピアノの音の大きさは、90dB~100dB、プロの演奏家がフォルテッシモで弾くと110dB近くになることもあります。これは地下鉄のガード下や、自動車のクラクションに近い大きさです。

ピアノの音は「空気伝搬」と「固体伝搬」ピアノの防音で注意すべきは、以下の2つの音の伝わり方です。
空気伝搬音(空気を伝わる音)
響板から放たれ、壁や天井、窓を通して外へ漏れる音。
固体伝搬音(振動として伝わる音)
ピアノの脚(キャスター)から床へ直接伝わる振動です。
打鍵時の「ゴトゴト」というアクション音や、低音の弦振動が床を伝わり、階下や隣室へ「振動音」として響きます。
ピアノの振動は階下への騒音になる特にマンションや2階以上の部屋で問題になりやすいのが、この「固体伝搬音」です。
ドラムのキックペダルほどではありませんが、ピアノもキャスターを通じて床に強いエネルギーを伝えています。
対策としては、床を二重構造(浮き床構造)にし、防振ゴムなどで縁を切ることで、振動が建物躯体に直接伝わらないようにする必要があります。単にカーペットを敷くだけでは、重量衝撃音(ドスンという音や地響きのような振動)を完全に防ぐことは困難です。

自宅にピアノ防音室を造りたいと考えた目的はなんですか?

防音室の目的を一度整理してみると…
趣味でアップライトピアノを楽しみたい方
音大受験生やプロのピアニスト(長時間・深夜の練習)
自宅でピアノ教室を開きたい方声楽や他の楽器とのアンサンブルもしたい方
防音対策にはコンセプト(目的)が非常に重要です。ただ音が漏れなければ良いというわけではなく、ピアノの場合は「耳が疲れない、美しい響き」が求められます。
例えば、レコーディングやオンラインレッスン配信を前提とする場合は、外部の騒音(車の音など)をシャットアウトする性能も必要ですし、室内でのフラッターエコー(不快な反響)を取り除く吸音パネルの配置などもプランニングの要となります。
気になるピアノ防音室の工事費用と工事日数

それでは、実際にピアノ防音室を自宅に造る場合、どれくらいのコストがかかり、施工にはどのくらいの日数が必要なのでしょうか?
・建物の構造や解体工事の有無・使用目的・周辺環境
・性能・仕様、etc…
上記以外にも、様々異なります。また、既存の広さ・高さ、新築物件の場合は建物本体工事と同時施工の可否などによっても変わってきます。
工事費用(ハイクオリティ仕様の場合)
| 構造 | 遮音性能(室内) | 遮音性能(室外) ※1 | 価格 |
|---|---|---|---|
| 鉄筋コンクリート(RC)、 鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造) | D-50 | D-60~ | 400万円〜 |
| 木造、鉄骨造 | D-50 | D-50~ | 450万円〜 |
※1 遮音性能(室外)は建物の構造により変わります。
■以下の項目は上図には含まれておりません。
・解体工事・床レベル調整工事・窓及び建具・照明器具
・エアコン・防災工事(集合住宅の場合)
■上図『使用目的』は22時までの防音室を想定してご近所への配慮した目安となり周辺環境や音源によって異なります。
■室内6畳程度の大きさに防音室を作った参考価格です。
■リフォーム工事の場合、構造上補強工事が必要となり、別途費用が掛かることがございます。
■遮音性能は開口部を除きます。
■各種設備(換気、空調、電気)・開口部仕様(窓、ドア、換気口)・仕上げの使用により価格は変動致します。
■防音工事をする建物の構造・階・規制などにより防音施工できない場合
工事日数
建物の構造や解体工事の有無、使用目的、周辺環境、性能や仕様、既存の広さ、新築の場合は建物本体工事と同時施工の可否などによって変わってきますが、基本的にピアノ防音室を施工した場合の工事日数は、平均で約20〜22日程度。
木造戸建て住宅に防音室を施工した場合の工事日数は、平均で約22〜24日程度です。
ピアノ防音施工業者選定おすすめの方法
防音工事をしてくれる業者は数多くいて、ホームページなどで記載されている性能は同じなのに、各業者によって金額に差がありますよね。
なぜかと言うと、防音室の工法は業者ごと独自の工法となり、それによって使う材料も異なるから。
材料の違いや工事請負形態、管理方法、工程にも目を配った上で、防音工事業者を選びましょう。
また、防音性能の表記も業者によって基準が異なり、同じ性能表記でも実際にお客様が求める性能に及ばなかったというご相談もございます。
日本工業規格JISという、国が定めた規格を基にした性能表記なのか?
国際標準化機構が定めるISO規格なのか?
それとも業者独自の基準なのか?
防音工事業者を選ぶ際には、見積もり金額のみに左右されないように注意しましょう。
一人ひとりの実現したい内容を丁寧に分析・ヒアリングした上で、遮音性能に優れた快適なピアノ防音室を設計施工してくれる防音工事業者を選んでくださいね。
防音測定のポイント

できあがったピアノ防音室がどのくらいの遮音性能がとれているのか、施工後に測定検査を行う必要があります。
測定は、隣接する2室間の片方で音を発生させ(音源室)、もう片方(受音室)に伝わる音のレベル差や、音源室のドアやサッシを閉めた状態で伝わる音のレベルを測るといった方法です。
音源室での音の発生は、専用のスピーカーを使用しピンクノイズなどを出力することで発生させます。
次に反響音・残響音を測定し、室内の音の響きを確認します。
その後、遮音性能・残響音の測定データの解析を行い、結果をまとめ、どのくらいの遮音性能がとれていて、室内の音の響きはどのくらいなのかを判定します。
この測定方法も防音工事業者によって基準や方法は異なります。
どの規格や基準に基づいた測定方法なのか、事前に確認した上での防音工事業者選定を行いましょう。
実際に施工したピアノ防音室ギャラリー
まとめ
自宅でピアノ演奏をする際は、単に壁を厚くするだけでなく、ピアノ特有の「重量」「振動」「響き」を考慮した防音室を造ることで、周囲への音漏れを気にせず、かつ上達につながる環境になることがわかりました。
簡易的な工事では、特にピアノの重低音や床振動は止まりません。
大切なピアノと長く付き合うために、ひとつの設計ミスも許されない防音の世界。まずは私たち、防音と音響のプロにご相談ください!