一戸建て住宅を検討するタイミングで、【自宅に音楽スタジオを造る】という夢をお持ちの方も多いのではないでしょうか?「なにから始めたらいいのかわからない」「どのくらい費用が掛かるの?」「貸しスタジオで演奏するレベルの音を、本当に自宅で出せるの?」
そんな疑問やお悩みに、防音工事専門会社であるD.S.Pがお答えしていきたいと思います!
戸建てに音楽スタジオ|プランニングの進め方
総務省統計局の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の住居比率は、戸建てが81.4%、共同住宅(マンション)が17.4%と、戸建ての割合が多くなっています。首都圏で見た場合は、戸建てが66.16%、共同住宅が32.51%ほどで、地方部に比べて共同住宅の割合は増えますが、全国的に戸建て住宅の住居比率の方が高いというデータが出ました。
戸建て住宅を選ぶメリットとしてよく聞くのが、マンションに比べて騒音やプライバシーに関わるトラブルが起きにくいというもの。
マンション等の共同住宅には、価値観も生活スタイルも違う複数の住戸が一つの建物で暮らしているため、隣人とのトラブルが発生しやすい傾向にあります。
とはいえ、戸建て住宅だから騒音トラブルが起きないというわけでは、もちろんありません。
近年土地や建物価格高騰等の理由から、都市部では、限られた土地に二・三階建ての家を建てるのが主流になっています。隣家との距離が数十センチということもよくある話で、マンションと似たような騒音トラブルが起こる可能性を避けられなくなってきました。
近隣住人への配慮はもちろん大切ですが、忘れてはいけないのが、家庭内騒音。
それぞれの「おうち時間」を有意義に過ごす人が増えた近年、例えば楽器演奏をする音が同居する家族のストレスになってしまったり、逆も然り・・・
戸建て住宅といえども、近隣で暮らす方や同居する家族への「音の配慮」は必要不可欠な時代ですね。
戸建てに 音楽スタジオ|プランニングの進め方
では、【自宅に音楽スタジオを造る】という夢を叶えるためには、どのようにプランニングしていけばいいのでしょうか?
まずは音楽スタジオとして使用する「目的」や「用途」を考えましょう。
・スタジオ内で使用したい楽器は?
・仕上がりの広さは大体どのくらい欲しいか
・何時くらいまで演奏をしたいか
ざっくりイメージ出来たら次は具体的なプランニングに入りましょう。
新築戸建て住宅の場合、注文住宅か建売住宅かの2つのパターンに大別されます。
注文住宅に音楽スタジオを計画の場合
設計の段階から防音工事業者に相談することで、
・建築確認申請時の仕様(音楽スタジオを居室で申請するか納戸で申請するか)
・工事仕様・施工区分等
などを、ハウスメーカーや工務店と協議の上で音楽スタジオ部分のプランニングをすることが可能になります。
音楽スタジオを施工する目的や用途によって、お部屋の寸法は変わるため、それを前提としてお部屋の広さや間取り、天井高をある程度決めることができますね。
建物本体工事のハウスメーカーによりますが、同時施工ができれば、解体工事費用や内部養生費等のコストダウンに繋がることがあります。
また、建物の竣工引き渡し時に合わせて音楽スタジオの工事も完了することができるため、時間的なロスが減るというメリットもあります。
ただし保証等の面から、ハウスメーカーや工務店側で他社の同時施工を認めない会社もあるため、業者選びの際は確認が必要です。
仮に同時施工ができなくとも、住宅の設計段階からハウスメーカーや工務店と防音工事業者が事前打合せできることで、効率の良い音楽スタジオの設計施工が可能になります。
例えば木造戸建ての場合、梁補強工事が大きなポイントです。
防音工事は通常の内装工事と比べ、多く資材を使用するので、耐荷重を考慮する必要があります。そのため、梁にかかる荷重を分散する為に、通常の住宅よりも梁を増やして施工しなければなりません。
建物本体工事の際に梁補強をしておくことが可能な場合、全体的な工事予算の抑制に繋がります。
また、工事区分を事前にハウスメーカーや工務店側、防音工事業者側とで決めることにより、無駄な費用の発生や手間を抑えることができます。
建売住宅に音楽スタジオを計画の場合
建物の契約形態にもよりますが、ほとんどの場合、住宅の本体工事が全て終わり施主へ引き渡し後に、防音工事業者が【リフォーム工事】として音楽スタジオを施工することになります。
その場合のデメリットとして、出来上がったばかりのお部屋を解体するところから始めることになるため、無駄なコストが生まれてしまいます。
建物のハウスメーカーや工務店と同時進行で防音工事業者を決める場合でも、同時施工が不可だと、上記と同じく【リフォーム工事】として防音室を施工することになります。
自宅に音楽スタジオ|ポイント①
子どもが寝てからトランペットを吹きたい、生ドラムを思い切り演奏したい、バンドメンバーが集まれる場所にできれば・・・
音楽スタジオでやりたいことはたくさんあるけれど、やはり心配なのは、騒音問題!
どのような点に注意が必要なのか、ポイントを見ていきましょう。
通常音には、鳴らした音が空気を振動させて伝わる空気伝搬音と、振動が建材を通して伝わる固体伝搬音の2つがあります。伝わり方が異なるため、防ぎ方も当然違ってきます。
防音を検討するときには、音楽スタジオとして使用する用途やコンセプトから、防ぎたい音の種類をしっかり見極めることが重要になります。
例えば、ピアノの場合は約90~110dB、生ドラムの場合は約100~120dB、サックスや金管楽器の場合は約110~120dB、声楽・ボーカルの場合は約90~110 dB、エレキギターをアンプやスピーカーに繋いで演奏する場合は約120dB程度の音の大きさがでます。
これは直接耳に届く、空気を振動させて伝わる空気伝搬音。
音は床を伝わり、また壁や天井、床に入射した音が物体内に伝わり外部へ放射されるため、自宅に音楽スタジオを検討する際は、用途や目的から「音のパワー」「低音から高音までの幅広い音域」「床から直接伝わっていく振動」に対策が必要になります。
自宅に音楽スタジオ|ポイント②
まずは音楽スタジオを住宅のどこに造りたいかを考え、希望の部屋に造ることが可能なのか判断しなくてはなりません。
基本的に生ドラムを設置する音楽スタジオの場合は、耐荷重や仕上りの天井高などの問題から、木造の戸建て住宅2階以上には、施工することができません。
木造戸建て住宅の場合、2階の段階で掛けられる耐荷重に限りがあります。スペックの高い防音室は荷重の問題から施工が厳しく、建物計画時に耐荷重を考慮した構造設計が必要になります
次にお部屋の広さ。
音楽スタジオとして一室丸ごとリフォームをする場合、現状より大分小さい仕上がりとなります。例えば元が8畳のお部屋をボックスインボックス構法で生ドラムを設置できる防音室に施工した場合は、仕上がり内寸で約4畳程度になります。
仕上りの広さを考慮した上で、使用用途・目的に合ったお部屋にしなくてはなりません。
バンド練習として使用したい場合に必要な広さは、仕上りで最低5畳程度。もちろん部屋に入る人数や楽器を考慮してのプランニングが必要です。
ただし必要畳数はあくまで目安ですので、バンドセッティング、メーカーやサイズ、使用環境、さらには個人の感覚によっても異なります。
音楽スタジオが居心地のいい空間になるよう、広さや高さ、空調・照明の快適さを考慮した設計施工が求められます。
遮音・防振構造の必要性
遮音をしっかりと実現した音楽スタジオでは、壁・天井・床に対して遮音・防振構造(浮遮音層)が基本的に必要です。
浮いている空間(浮遮音層)を造ることにより、楽器から鳴る音や歌声はもちろん、キックペダルを踏むことで床に伝わる振動やアンプ・スピーカーから床に伝わる振動などの固体伝搬音も減衰させる防振構造となります。
このように、「お部屋(箱)の中にもう一つお部屋(箱)を浮き構造で造ること」を「ボックスインボックス構法」といいます。
室内側の遮音部分と既存の遮音部分により、総合的な遮音性能がとれるようにすることで、防音性能の高いスタジオとなるのです。
次に換気扇などの開口部。
防音室は構造上、隙間がなく気密性がとても高いお部屋のため、通常の部屋よりも空気の入れ替えがしづらいものです。
建築基準法で、室内の24時間換気が義務付けられていることはもちろんですが、気密性の高い防音室内の湿気や空気の入れ替え・健康面という観点からも換気口を無くすことはできません。
スタジオでの換気口は、防音効果の高いものを使用し、そこからの音漏れを防ぐ必要があります。
夢が叶う!「音のある暮らし」
音楽スタジオでは、遮音性能はもちろんですが、ミュージシャンやボーカリストが快適に演奏・歌唱することができる室内音響設計が施されていなくてはなりません。
フラッターエコーや定在波、ブーミングといった音響障害を発生させない設計はもちろんですが、スタジオ使用用途や目的に合わせて、響きの長さや質をある程度設計することが求められます。(ここで言うある程度とは、音楽スタジオが完成し使用していく中で、配置する物やセッティングする機材・セッティングの仕方で、ミュージシャンの好みの音場調整が可能になるからです。)
音場のバランスが取れた心地の良い空間であるために大切なのは、室内音響設計と意匠デザイン・電気音響設計です。
■室内音響設計の必要性
音楽スタジオの残響時間は、音楽のジャンルやミュージシャンの好みによって異なりますが、平均的には、室内平均吸音力が20~40%程度で最適な残響時間を得ることができます。残響や反射面・吸音面を好みによって変えられるようなパネル等を設置し、スタジオ使用用途や目的に合わせて響きの調整をすることも可能です。
室内の響きで重要なのは「バランス」。
響きが強すぎると演奏の妨げになり、極端に響きが少なすぎると音楽に違和感が生じてきます。
スタジオ独自のスタイルで、用途や目的に応じた空間になるような室内音響設計が必要です。
■意匠デザイン・電気音響設計の必要性
スタジオの広さや天井高、用途に応じた照明の使用等の内装設計は、使用者にとって重要な要素となります。
また、芸術性が高まるような意匠デザインや落ち着く雰囲気の意匠デザイン等、用途に合わせた内装仕上げに加えて、スピーカー等の電気音響設備を求める空間に適した設置方法でしなくてはなりません。
スピーカーの設置方法として壁面にビルトインする場合、置き型から吊り型・背面固定型等様々あります。設置するスピーカーの特性や条件を考慮し、クオリティの高い音質を確保しましょう。
電気音響設計は、目的や用途、使用者の好みで大きく変わります。
スタイルに合った配置を選択し、バランスの良い音場となるよう、電気音響設計をしっかりとしていきましょう。
新築戸建てを計画されるタイミングで、生ドラムやピアノ等多目的スタジオを検討されたI様の施工事例をご紹介!
検討する上でのアドバイス等お話しいただいていますので、ぜひご覧ください!
静岡県静岡市 I様邸 多目的防音室
戸建てに音楽スタジオ|費用はどれくらい?
気になるのが費用。
上記の様、防音工事は目に見えないところにコストがかかります。内装工事のような装飾的な部分だけではありません。
また防音会社は数多くありますが、それぞれの会社によって費用が違うのには理由があります。
なぜなら防音工事の施工方法は各業者独自のものであり、材料から工程、管理方法、そして防音性能の表記まで異なるから。
「防音工事は目に見えないところにコストがかかる」
だからこそ、価格だけの判断ではなく、お客様と目線を合わせてプランニングしてくれる防音会社を選んでくださいね。
また、目的や用途、使用環境によっても費用は大幅に変わります。
目的によって必要な遮音性能や防ぐべき音は異なり、既存の建物構造からお部屋の広さ、解体工事の有無、新築の場合は建物本体工事と同時施工が可能なのかによっても変わってくるからです。
下記表は目安として参考までにご覧ください。
まとめ
一人ひとり、住居環境や本体建物の構造、生活スタイルが異なる中で、使用楽器・演奏スタイル、やりたいことだってそれぞれ違うはず。
一戸建て住宅で音楽スタジオを検討する際のポイントがわかりましたね!