自宅でドラム演奏を周囲への音漏れを気にせずに、好きな時間にできたら最高ですよね!わたしたちも、「自宅でドラム練習をしたい」というご相談をいただくことが多々あります。
自宅でドラム演奏ができれば、スタジオに行く時間やセッティングする時間がなくなり、なにより思い立った時にすぐ練習できるため、思う存分音楽に打ち込むことができます。
自宅でドラム演奏をすることはできるのでしょうか?・・・答えは「できる!」。
ドラム防音室をご自宅に造ることで、実現可能です。
ドラム防音室を自宅に施工させていただいたお客様より、以下のようなお声を頂いています。
今回は、自宅にドラム防音室を施工するための重要なポイントなどをみていきましょう。
まずドラム防音室を自宅で実現する基本について
住宅と一口に言っても、戸建て住宅・集合住宅とあり、構造もRC造、鉄骨造、木造と様々です。まずはドラム防音室をどこに造りたいかを考え、希望の部屋にドラム防音室を造ることが可能なのか判断しなくてはなりません。
生ドラム防音室が造れる住宅とはどんな住宅でしょうか
基本的に生ドラム防音室は、耐荷重や仕上りの天井高などの問題から、木造の戸建て住宅2階以上や、一般的なマンションなどの集合住宅には、施工することができません。
ただしRC造の集合住宅で、既存のスラブ厚が大きいものや、既存の天井高が高いものは、生ドラム防音室を施工することが可能な場合もあります。
木造戸建て住宅の場合、2階の段階で掛けられる耐荷重に限りがあるため、スペックの高い防音室は荷重の問題から施工出来ません。
生ドラム防音室などスペックの高い防音室施工は、建物計画時に耐荷重を考慮した構造設計以外は厳しいと言えるでしょう。
生ドラムができるお部屋の広さを考える
次にお部屋の広さ。
防音室として一室丸ごとリフォームをする場合、現状より大分小さい仕上がりとなります。
例えば元が8畳のお部屋をボックスインボックス構法で生ドラム防音室に施工した場合は、仕上がり内寸で約4畳になります。
仕上りの広さを考慮した上で、ドラム防音室を造りたい目的に合ったお部屋にしなくてはなりません。
個人で生ドラム演奏をする場合は、仕上りで最低3.5畳程度ないと、音響の面を見ても使いづらいお部屋になってしまいます。電子ドラムのみお部屋に設置する場合も、同じく仕上りで最低3.5畳程度必要です。
バンド練習として使用したい場合に必要な広さは、仕上りで最低5畳程度。もちろん部屋に入る人数や楽器を考慮してのプランニングが重要です。
ただし必要畳数はあくまで目安ですので、ドラムセットのセッティング、メーカーやサイズ、使用環境、さらには個人の感覚によっても異なります。
ドラムの特徴を捉えて生ドラム防音室を検討してみる
ドラムとは、複数の太鼓やシンバルなどの打楽器が組み合わさってできているもの。
リズムを刻むことができるパーカッション楽器の集合体であり、それぞれの打楽器の音の特徴を活かしながら演奏することができます。
練習スタジオやライブハウスなどに置いてあることの多い一般的な組み合わせは、太鼓が5個、シンバルが4枚の編成。
ドラムセットの中で一番大きく低い音が出るのはバスドラム。足でキックペダルを踏むことで太鼓を叩き、低音を響かせます。
そこに高い音の出るシンバルやハイハットが加わるため、ドラムセットは低音から高音までの幅広い音域を発することができます。
また、音楽のジャンルや出したい音などによって自由にセッティングでき、一つのドラムセットで様々な音を奏でることができるため、その音質はドラマーによって多種多様です。中には、2つのバスドラムをセットに組み込んで使用する、ツーバスなどもありますよね。
貸スタジオなどでドラム演奏する場合は問題ないですが、自宅でとなると、やはり騒音問題が避けられません。
ドラムセットから出る音のパワーレベルは、大人だと100dB~、子どもでも80~100dB、プロのドラマーだと120dBほど。120dBとは、飛行機のエンジン付近にいるのと同じ程度のうるささです。
ドラムの特性でもある幅広い音域をみても、高音域は吸音・遮音しやすいですが、低音域は吸音・遮音しにくいため、注意が必要です。
通常音には、鳴らした音が空気を振動させて伝わる空気伝搬音と、振動が建材を通して伝わる固体伝搬音の2つがあります。
ドラムは、空気を振動させて伝わる音に加えて、バスドラムから発せられる重低音やキックペダルなどの、床から直接伝わる振動にも対策が必要になります。なぜなら、ドラムは床に置いた太鼓を、足でペダルをキックすることによって叩くため。キックペダルからの振動は、電子ドラムでヘッドホンを用いて練習した場合でも発生します。
音は床を伝わり、また壁や天井、床に入射した音が物体内に伝わり外部へ放射されるため、自宅でドラム演奏をする際は、「音のパワー」「低音から高音までの幅広い音域」「床から直接伝わっていく振動」に対策をしなくてはなりません。
音の種類について詳しくはこちら↓
ドラムの振動は床衝撃音になる
音の問題が重視されるようになった近年。
実は住宅トラブルで一番多いのは、「騒音」と言われています。
ドラム演奏が「騒音」にならないよう、しっかりとした対策をとらなくてはなりません。
ドラム演奏時の騒音対策として大切なことの一つとして挙げられる「振動」ですが、床が直接振動することによって下階に伝わる音を「床衝撃音」と言います。
床衝撃音は、建物の構造や床仕上げ材の種類などによって伝わり方が異なります。
床衝撃音は音の特性の違いから「軽量床衝撃音」と「重量床衝撃音」に分けることができます。
軽量床衝撃音
スプーンなどを床に落としたときに出る「コツン」という音、スリッパで歩いて「パタパタ」鳴るなどの比較的軽めで高音域の音を言います。
軽量床衝撃音の遮音性能は床の構造や表面仕上げによって変わります。
構造は直床よりも二重床、仕上げ材はフローリングや石貼りよりもカーペットや畳のように吸音性が高いものほど性能は高くなります。
重量床衝撃音
飛び跳ねたときなどに発生する「ドスン」という音、バスドラムを踏む時に出る振動などの鈍くて低い音を言います。
重量床衝撃音の遮音性能は、床の材質が固くて重いほど高くなり、マンションでは床のコンクリートスラブの厚みに比例します。(梁で囲まれたスラブ面積の広さも関係します)
ドラム防音室の防音レベルは高いのでしょうか
音が伝わることを「音の伝搬」と言い、壁があれば音は小さくなり、これを「遮音」と言います。
この音の小さくなる値は「D値」で示されます。
例えばドラムを120dB で演奏し、隣の部屋で50dB の大きさで聞こえるケースでは、遮音性能は120dB から50dB を引いた数値、すなわち“D-70”と示します。
生ドラム防音室では通常、目的や近隣状況にもよりますがD-65~70、平均D-70程で施工します。
隣室や隣戸の条件によって必要な遮音性能は変わりますが、近年わずかな音でも苦情になることが多々あるため、防音性能の高いドラム防音室を造らなくては、安心して音を楽しめる環境にはならないでしょう。
では防音性能の高いドラム防音室とは、一体どのようなものでしょうか?
まず防音室では、壁・天井・床に対して遮音・防振構造(浮遮音層)が基本的に必要です。
浮いている空間(浮遮音層)を造ることにより、ドラムセットから鳴る音はもちろん、キックペダルを踏むことで床に伝わる振動などの固体伝搬音も減衰させる防振構造となります。
「お部屋(箱)の中にもう一つお部屋(箱)」を浮き構造で造ることを「ボックスインボックス構法」といいます。
防音室内側の遮音部分と既存の遮音部分により、総合的な遮音性能がとれるようにすることで、防音性能の高い防音室となります。
ドラム防音室の開口部に注意する
次に換気扇などの開口部。
防音室は構造上、隙間がなく気密性がとても高いお部屋のため、通常の部屋よりも空気の入れ替えがしづらいものです。
建築基準法で、室内の24時間換気が義務付けられていることはもちろんですが、気密性の高い防音室内の湿気や空気の入れ替え・健康面という観点からも換気口を無くすことはできません。
防音室での換気口は、防音効果の高いものを使用し、そこからの音漏れを防ぐ必要があります。
自宅にドラム防音室を造りたいと考えた目的はなんですか?
防音室の目的を一度整理してみると
・趣味でドラム演奏をしたい方
・プロのドラマー
・バンド練習のための、アンプ音まで考慮した、人が集まるお部屋
・DTMスタジオとして、レコーディングをしたい方
様々な方がいらっしゃるかと思いますが、防音対策にはコンセプト(目的)が非常に重要です。
遮音をしっかりと実現して快適な空間を手に入れたい方のための工事と、簡易的にと思って造るお部屋とは全く違います。
アンプを繋いでバンドでの演奏をするためのお部屋は、使用するアンプやスピーカーの出力によって音量差が異なるため、種類や使用環境に合わせての対策が必要です。
またレコーディングを前提とした防音室を造りたい場合は、室内で出す音が外部へ漏れないようにすることももちろんですが、外からの音を遮断し、室内音源の妨げにならないようにすることもポイントとなります。マイクで音を拾うことから、室内反響や残響、設備機械音にまで配慮した上で、吸音効果の高い壁面や並行面の少ない室内形状のプランニングが必要です。
気になるドラム防音室の費用と施工期間
それでは、実際にドラム防音室を自宅に造る場合、どれくらいのコストがかかり、施工にはどのくらいの日数が必要なのでしょうか?
ドラム防音室を自宅に造るための費用と施工期間は、
・建物の構造や解体工事の有無
・使用目的
・周辺環境などによって異なります。
また、性能や仕様はもとより、既存の広さ、新築の場合は建物本体工事と同時施工の可否などによっても変わってきますので、下記表は目安としてご参考までにご覧ください。
費用
■以下の項目は上図には含まれておりません。
・解体工事・床レベル調整工事・窓及び建具・照明器具
・エアコン・防災工事(集合住宅の場合)
■上図『使用目的』は22時までの防音室を想定してご近所への配慮した目安となり周辺環境や音源によって異なります。
■室内6畳程度の大きさに防音室を作った参考価格です。
■リフォーム工事の場合、構造上補強工事が必要となり、別途費用が掛かることがございます。
■遮音性能は開口部を除きます。
■各種設備(換気、空調、電気)・開口部仕様(窓、ドア、換気口)・仕上げの使用により価格は変動致します。
■防音工事をする建物の構造・階・規制などにより防音施工できない場合もあります。
施工期間
建物の構造や解体工事の有無、使用目的、周辺環境、性能や仕様、既存の広さ、新築の場合は建物本体工事と同時施工の可否などによって変わってきますが、基本的に電子ドラム防音室を施工した場合の施工期間は、平均で約18~20日間。
木造戸建て住宅1階に生ドラム防音室を施工した場合の施工期間は、平均で約24日間です。
実際に施工したドラム防音室ギャラリー
ドラム防音施工業者選定おすすめの方法
防音工事をしてくれる業者は数多くいて、ホームページなどで記載されている性能は同じなのに、各業者によって金額に差がありますよね。
なぜかと言うと、防音室の工法は業者ごと独自の工法となり、それによって使う材料も異なるから。
材料の違いや工事請負形態、管理方法、工程にも目を配った上で、防音工事業者を選びましょう。
また、防音性能の表記も業者によって基準が異なり、同じ性能表記でも実際にお客様が求める性能に及ばなかったというご相談もございます。
日本工業規格JISという、国が定めた規格を基にした性能表記なのか?
国際標準化機構が定めるISO規格なのか?
それとも業者独自の基準なのか?
防音工事業者を選ぶ際には、見積もり金額のみに左右されないように注意しましょう。
一人ひとりの実現したい内容を丁寧に分析・ヒアリングした上で、遮音性能に優れた快適なドラム防音室を設計施工してくれる防音工事業者を選んでくださいね。
防音測定のポイント
できあがったドラム防音室がどのくらいの遮音性能がとれているのか、施工後に測定検査を行う必要があります。
測定は、隣接する2室間の片方で音を発生させ(音源室)、もう片方(受音室)に伝わる音のレベル差や、音源室のドアやサッシを閉めた状態で伝わる音のレベルを測るといった方法です。
音源室での音の発生は、専用のスピーカーを使用しピンクノイズなどを出力することで発生させます。
次に反響音・残響音を測定し、室内の音の響きを確認します。
その後、遮音性能・残響音の測定データの解析を行い、結果をまとめ、どのくらいの遮音性能がとれていて、室内の音の響きはどのくらいなのかを判定します。
この測定方法も防音工事業者によって基準や方法は異なります。
どの規格や基準に基づいた測定方法なのか、事前に確認した上での防音工事業者選定を行いましょう。
まとめ
以上で、自宅でドラム演奏をする際はドラム防音室を造ることで、周囲への音漏れを気にせずに演奏できる環境になるということがわかりました。
最近「安い防音」など価格破壊の防音施工を目にすることも増えましたが、それは本当に求めている防音性能はとれているのでしょうか?
防音性能を出すためには、ひとつの設計ミス・施工ミスも許されません。
まずは私たち、防音のプロにご相談ください!