室内音響設計とは、より良い音響空間を創造するために、構造、室形状、内装仕上げ等の設計をすることを指します。用途や状況によっては、その空間に適した電気音響設備の設計も必要になります。
対象となる室やその規模、使用目的によって、求められる音響設計は異なりますので、まずはコンセプトを明確にして音響計画を立てなくてはなりません。
室用途によってディティールは異なりますが、室内音響設計において重視される大要の解説をしていきたいと思います。
室内音場の代表的な特徴は「反響」と「残響」
室内音場とは、壁や床、天井などの室内空間における音の振る舞いを指します。
室内には壁や床、天井があるため、楽器やスピーカーといった音源から届く音だけではなく、壁や床、天井に反射されて届く音も聞こえます。
その反射音の中で、時間差がついて聞こえてくる分離された音のことを反響音といい、分離せずにしばらく残る音を残響音といいます。
しっかりとした防音対策が施されたお部屋は、その構造上音が響きやすく、音響障害や反射音を感じやすくなるため、よりしっかりとした音響設計が必要です。
反響音(エコー)とは
直接音と反射音を区別して聞くことができる音。身近な例で言うとやまびこです。 山でヤッホーと言うとヤッホーという声がそのまま返ってくる、というように、時間差がついて聞こえてくる1つ、または複数の分離された音です。
反響音における代表的な現象の一つとして、フラッターエコーがあります。
並行する天井と床の間で音が繰り返し反射し、反響音が連続的に聞こえる現象のことです。
日光東照宮の薬師堂では、天井に描かれた竜の絵の真下で手をたたくと起こるフラッターエコーが「鳴き竜」と呼ばれ、体感することができます。
面白い現象ですが、フラッターエコーが室内空間で発生すると、音が濁ったり、音が大きくなったり小さくなったりする空間ができる原因となるため、極力防ぐ必要があります。
■並行する大きな反射面への対策
音の往復を繰り返すのを防ぐには、下記の対策が挙げられます。
拡散処理
1,天井や壁面といった部屋の形状を、平行ではなくする
2,拡散体を取付け、音の逃げ場を作る
吸音処理
1,内装の仕上げを、床面にはカーペット、壁面にはタペストリーやカーテンを取付ける等、吸音構造にする
2,音響調整パネルを取り付ける
残響音とは
直接音と反射音を区別して聞くことができない音。身近な例で言うとお風呂での歌唱です。お風呂に入りながら歌うと声がよく響き、余韻が残って歌がうまくなったような気がしますね。このように、音を止めた後も分離せず響きがしばらく残る音が残響音です。
室内の響きについては、バランスが重要です。
残響が強すぎると音の明瞭性が悪くなったり演奏の妨げになり、極端に少なすぎると音楽に違和感が生じてきます。そのため、スタジオのように会話や言葉の聞き取りの明瞭さを必要とする部屋では、残響時間が短くなるよう設計します。コンサートホールのように、音楽が響くことを必要とする部屋では、残響時間が長くなるよう設計します。残響時間が短いと余韻がなくなり、音楽の音の豊かさが失われてしまうためです。
■最適な残響時間を求める
室内の残響の長さを評価するものの一つとして、残響時間があります。残響時間の定義は、音源を停止後、室内の音の強さが百万分の一(-60 dB)まで減衰するのに要する時間(秒)とされています。
最適な残響時間を下記の式にて求めることができます。
平均吸音率を20~30%にすることで最適な残響時間になり、室内の容積が増えれば最適残響時間が長くなるとされています。
まとめ
音を楽しむ環境には、しっかりとした室内音響設計が重要ということがおわかりいただえたでしょうか?
せっかくのいい機材や楽器、室内音場にこだわったお部屋で楽しみたいですね。
室内音響設計の具体的な例としては、お部屋の用途や目的、広さ(容積・面積)に対する適切な吸音、拡散処理を前提とした設計、建築材料の吸音率を考慮した仕上げ材の選定等が挙げられ、これらを施すには緻密な計算と確かな経験が必要です。
豊かな響きのある音場でストレスフリーに音を楽しむために、しっかりとした遮音・防振設計と室内音響設計を提案してくれる業者に相談してくださいね。